コラム

建築について

2019年03月04日


  子供の頃から、「建築」というものを見て聞いて、そして手伝いながら育ちました。大学に入って本格的に勉強を始めてから40年以上になります。その中で、私が多くの教えをいただいた方を今月は紹介します。     

  まずは、遠藤剛生氏。大阪に設計事務所を開いておられ、新卒の私が教えを受けた先生です。私の学生時代における建築の最先端、いわゆる新進の建築家で、建築雑誌に度々出ている大好きな先生。コンクリートの打ちっぱなし、幾何学的でシンプル、シンボリックな建物に心惹かれ片思いがふつふつと…。今風の就職活動なんてものはしていません。私は直接、その先生の事務所の門を叩きました。しかしながら4度断られ、5度目は、設計事務所の近くで遠藤先生を待ち伏せし、説得。先生は根負け、私の粘り勝ちで入所の許可をやっと取り付け、数々の事を教わりました。

  二人目は、安藤忠雄氏。建築事務所の設立後まもなく「住吉の長屋」で日本建築学会賞を受賞。東京大学の教授を経て、東日本大震災での遺児育英資金の会の実行委員長やオリンピック招致の理事など幅広く活動されています。自らの5つの臓器を癌で摘出されたにも拘らず、一線で活躍されている様子には頭が下がります。

  実は、遠藤氏と安藤氏は懇意にされていましたので、安藤氏と2度ほど食事会でご一緒させて頂きました。建築学会賞を受賞後、関西一円で数々の作品を建設中で、忙しく飛び回っておられる40代前半の頃でした。渋みの聞いた声で、今後の建築の方向について熱心に語ってくださいました。22時前になると、必ず帰宅。何でも22時から2時までは読書・研究の時間とお決めになっていたようで、ストイックな生活ぶりを垣間見た気がしました。
 住吉の長屋は、やはりコンクリートの打ちっぱなし。この面構えながら、通風と採光を確保し豊かな空間を作り上げているのは素晴らしいですよね。やっぱり私は、シンプルでシンボリックな建物が好き。よく遠藤先生に言われた事は、線の数を出来るだけ減らし単純化する。これは、建築や図面の話だけではなく、思考全てに通じるのだと。           

橋本 良一