コラム

秋の夜長に…

2021年11月01日

 コロナで始まり、コロナで終わる。2021年も残り2か月となりました。この一年、会社として、自分自身として成長したことはありましたか?こんなことをスタッフとともに考えながら過ごしております。歳は取ったけれど・・・・だけでは寂しいじゃないですか。忙しかった・・・だけでは来年につながりません。ウッドショックによる資材の高騰や各国のロックダウンによる資材不足など予測以上のコロナ禍の影響ではありましたが、そんな中でも多くのお客様と出会い、家づくりのお役に立てた一年であったと嬉しく思っております。

 秋の夜長に、ふと、久しぶりに懐かしい本を読みました。25年ほど前にある人に紹介され、熱心に研究した司馬遼太郎の『アメリカ素描』(例えば、信号機の色は赤が止まれで、青(緑)は進めとすれば、誰もが理解できる)、「文化」は不合理で特定の集団(たとえば民族)のみ通用する特殊なものであるとしています。靴を脱ぎ、揃える。お正月には初詣に行き、お節料理を食べるなんてのは「文化」です。どちらも重要で大切なものですが、「文化」に関しましては強く維持する気持ちがないと継続していくことは難しいものです。

 いろいろなお客様と家づくりをしていますと、そこにはまさにその文化と文明が混在しています。利便性と合理性を考えると、畳スペースは必要なのか?トイレやお風呂に窓がいるのか?梅雨や花粉の多い地域でバルコニーは必要か?壁はクロスか、塗り壁か?キッチンは対面式?背面式?アイランド式?ふと、心落ち着ける場所はどこですか?リビング階段や大きな吹き抜けは?

自分が(家族が)何を大切にしたくて、どんな暮らしをしていきたいのか。そこには利便性や合理性だけでなく、『便利なのはわかっているけど、こっちのほうが落ち着くんです・・・』何事にも便利な世の中になってきているからこそ、少し立ち止まり、心の声に耳を傾けるのも大事なのかもしれません。注文住宅としての建築ではどのようにもなりますが、心の声を明確にするとさらに満足のいく家ができるのではないかと思います。私たちはその想いに応えられるようにこれからも努力を惜しまず、家づくりに向きあっていきたいと思います。

本年も大変お世話になりました。来年もどうぞよろしお願い申し上げます。
                                                               上田 公平